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うん…綺麗になったかな、
手を目の前に翳して綺麗になったか隅から隅までチェックを入れる…
「ぷ」
手に夢中になっていたら背後から吹き出すような声が聞こえ恐る恐る振り返ってみるけど、そこにあるのはさっきと変わらない光景…
小さなキッチンの中央に忠長さんが変わらず仏頂面で何かをかき混ぜている…
気のせいか…
とりあえず気を取り直して、企画書を手に取り 緊張で声が上擦らないように注意しながら声を絞りだす…
『あの…今回のイベントに出すデザーニョの…っ』
噛んだっ!
デザーニョって…
カーッと体中の熱が顔に集まってくるのを感じ、思わず持っていた企画書で顔を隠す…
『すみませんっ』
「ふ…
あははは~なんだお前~」
『……!』
キッチン中に響き渡るような豪快な笑い声を上げられ、私はキョトンとその場に固まってしまった…
『あの…ごめんなさいっ
こ、こういうのに馴れてなくて…実は初めてだったりするんです!
普段会社から出る事なんてなくて、業務も単純作業ばかりで…っ』
自分の失敗に言い訳するように、聞かれてもない事をペラペラと話す私を見て 笑い過ぎて涙を薄っすらと瞳に映す忠長さんは私の肩を軽く叩いた…
「いや…大丈夫だ、笑って悪かったな…
余りに行動が面白いんでついな。」
まだ肩が笑っている忠長さんに、とりあえず すみませんともう一度頭を下げた…
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