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「なあ、ちょっとだけ…昔話し してもいいか?」
庭の方を見つめたままの忠長さんに頷くと、フッと小さな笑みを零し言葉を落とす…
「3年前に俺。 今の店を辞めようとした事があんだよ、その時期 色んな出来事が重なっててちょっと自身喪失しちまってよ…。」
その時の事を思い出しているのか、庭を見つめてる忠長さんの瞳が微かに揺れる…
「そん時に熊田のおっさんが俺に、辞める前に1度 客としてエスポワールに食事しに来いって…突然意味わかんねぇ事言い出してな。
初めは辞めたいって言ってる人間に何言ってんだコイツって思った、毎日のように来てるここで、なんで飯なんて食わなきゃいけねぇんだって…
それでも辞める条件に入ってたし、渋々食いたくもない料理頼んで食事してたんだよ…心の中ではさっさと食って辞めてやろうって思いながらな。
そのまま…料理 無理矢理口に押し込んで、出て行こうとしたんだよ…そしたら…」
そこで言葉を切った忠長さんは、私の方に体を屈め視線を合わせた…
「……お前がいたんだよ」
『……へ?』
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