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杉浦さんが話し出すまでの間、私は抱きつく彼から微かに聞こえる胸の鼓動を必死に聞いていた…
杉浦さんが今ここにいて、私に触れてくれてる。
そんな当たり前な事を頭で必死に認識するように何度も繰り返し自分に言い聞かせた。
そうじゃなきゃ、不安で押しつぶされてしまいそうだったから…
杉浦さんの語る真実がどんなものでも、自分にちゃんと受け入れられるのか…そればかりが気掛かりだった。
「なあ」
『は、はい』
「朝比奈の過去で、1番記憶に残っている人って誰?」
『え?』
突然投げられた質問に驚き、思わず大きな声が出るけど、すぐに頭で記憶を辿る…
1番記憶に残っている人…
真っ先に頭に浮かんだのは、母親…
早くに病気で亡くしていたから、数少ないその記憶のどれもが私の宝物になっている。
『あの、母親です…今の義理の母ではなくて産んでくれた本当の母の方です』
「ん。 じゃあその次は?」
その次?
何かを誘導するようにそう続ける杉浦さんは、私が先ず母の名前を上げる事を分かっていたかのようにそう言葉を落とす、私は首を傾げながらも言われた通りに記憶を辿った…
母親の名前を出した途端にその時の記憶が鮮明に蘇る、そのまま杉浦さんに言われたように次を探そうとすれば、自然とその後の記憶が私の脳裏に浮かんだ…
『隣に住んでたお姉さん』
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