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「……っ」
頭を下げる俺の言葉を聞いた母親は、突然涙ぐんでその場に崩れ落ちた…
咄嗟に手を差し出したけれど、既に膝は地面についた後だった…
「ごめんなさい…あんな事、言うつもりじゃなかったの…
奏を苦しめるつもりじゃなかった、自分が未熟で…だから奏に当たってしまったの。
幸せになるななんて思ってない本気じゃないの!
謝るのは私の方よ、ごめんなさい…本当にごめんなさい。」
責められるとばかり思っていたのに謝りたいのは自分だと叫ぶ母親に、なんて言葉を返したらいいのか分からない…
そんな事を心で葛藤していれば目の前の母親は言葉を紡ぐ…
「母さん…離婚したの。
ずっとそうしたかったのに出来なくて沢山バカな事もした…だけどそれでようやく気付いたの、
奏に…凄く辛い思いばかりさせてたって事に。
今更、今まで私がしてきた事許してなんて言わない…だけど、やり直したいの。
奏と関係を修復したいの!」
お願い奏…っと何度も頭を下げる母親を冷静に見つめる自分がいた。
関係を修復するにはお互いすれ違い過ぎたと冷めた自分が言っている、
だけど、菜緒なら…彼女ならどうするかと考えたら答えは自ずと決まっていた。
「立ってください」
え? なんて驚いた顔を向けた後、おずおずと立ち上がる母親の手を引き 俺は菜緒達がいる方へ歩き出した…
「…奏?」
焦るその声に向かい短く息を吐き その不安気に揺れる瞳に呟く…
「自分の口からちゃんと彼女を紹介したいので、ついて来てください」
…と。
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