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「何処か体調が悪いんです?」
「え?」
驚いた様な顔を向ける母親から少しだけ目線を落とす…
「彼女とは入院中に会ったと言っていたから…」
「あ、そうよね…
ちょっと入院はしてたけど別に大した事はないのよ、ただ疲れが溜まって体調崩してしまっただけ」
「昔から貴方は働き過ぎる所があるから…もう若くないんだし少し自重したらどうです?」
心配するつもりで呟いたのに、口から落ちる言葉は外の冷たい空気を含んで更に冷たさを増していくような気がした…
「昔は…仕事をするしか無かったのよ。
そうじゃなければ、寂しさを隠せなかったし…奏に当たるしか無かったから」
「……。」
そんな事が聞きたい訳じゃない…
本当は姉の葬儀の時…暗い部屋で1人泣いている母親に謝るつもりでいた、この人にとって生き甲斐だった姉を奪ってしまった事を…、だからって許して貰えるなんて微塵も思っていないし望んでもいない恨まれる方が楽だと知っていたから。
だから今…それを伝えて早くこの場を立ち去りたい、一生恨んでくれて構わないと伝えて。
だけど瞳を合わせた母親に伝えた言葉は、頭で考えたその言葉ではなくて…
「姉さんの事…本当にごめん。
謝って済む問題じゃないのも分かってる、だけど…
だけどもう許して貰いたい、菜緒と…彼女と幸せになりたい」
それだった。
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