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どうぞ。 なんて杉浦さんから手渡されたコーヒーを桜課長が慎重にそれを受けとった所で俺も一足遅れてリビングへとたどり着いた。
「ごめんね、アポも無しに突然堀川くんに着いて来たりしちゃって。
なんだか会社で色々話し聞いてたら会いたくなっちゃって」
「……。」
「あ、あの勿論会いたかったのは奥さんにだよ」
無言で冷めた顔になった杉浦さんに慌ててそう呟く桜課長は俺の方に向き直り、図々しかったかな私。 なんて笑窪混じりの苦笑いを向けるから俺も慌てて口を開く。
「いや、誘ったのは俺ですから」
あはは、なんて取り付くようにして笑いを落とし杉浦さんに視線を向けるけど、彼の意識は既に俺達からトイレの方向に向けられていた…
菜緒ちゃん出てきたのかな?
まだ姿は見えないけれど微かに水の流れる音が耳に届く。
に、しても杉浦さんは…菜緒ちゃん以外の女性には相変わらずの冷たさだな。
折角 顔が良いんだからもう少し愛想良くすればもっとモテると思……ってもう結婚してるんだからモテても仕方ないのか。
そんな事を頭で思想しながら持っていたコーヒーに口を付けた。
だけど、杉浦さんのこの冷たい態度の訳を後になって俺は知る事になる。女性だから冷たくした訳でも、冷血人間だからでもないその訳を。
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