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『悪いんすけど、協力とか出来ないですよ、
俺、杉浦さんの奥さんメチャクチャ好きなんで。 それに俺の彼女の友達だし』
まだ俯いている桜課長にそれだけ呟きニッといつもの笑顔を向ける。 桜課長が本当に杉浦さんの事を好きなのか知らないけど、あの2人につけ入る隙なんて無いと分かっているから特に気にしない。
今なら分かるけど、杉浦さんはきっと彼女が本社に来たその時から恋に落ちていたんじゃないかと思う。
そこに根拠なんてものはないけど、彼女がここに来ていた間の杉浦さんはずっと何処かおかしかった……
自分のデスクにいても意識が他に飛んでいるようだったし、その証拠に手に持つ書類が逆さまだった時もあった。
それに定時の鐘が鳴ると何故かいつも窓際にいるようにもなってた……
きっとそれも彼女の帰宅姿を捜していたんじゃないかと思う。
いつもクールで感情の無かった完璧な杉浦さんにも やっぱり心はちゃんとあったんだとその時初めて知った、そんな事当たり前なんだけど それを当たり前だと思えないくらい当時の杉浦さんには感情が無かった。
でもそれを引き出したのは紛れもなく彼女で。 だから誰が横槍を入れたとしても揺るがないだろうと分かる。
「堀川くん……なんかごめんね、勘違いさせちゃってるよね私。
あの別に杉浦さんの事好きな訳とかじゃないんだよ、ただ奥さんに忙しい彼と一緒にいて寂しくなかったのか聞きたかっただけ。
実はね、私 今交際してる人がいるの、向こうはいつも定時で上がれる仕事をしてて、それとは対照的なのが私。 いつも深夜残業でしょ?
彼ってね 凄く優しい人で、クリスマスやお正月……誕生日すら一緒に祝えなくても文句1つ言わないの。
でもきっと寂しい思いさせてるんじゃないかなって、女の私が考えるのも変だけど 心配で」
まだモジモジと手を遊ばせながら桜課長はだからね! なんて言葉を紡ぐ……
「私なんかよりずっと忙しかった杉浦さんと付き合ってた奥さんに本当のところどうだったのか知りたいの」
『……。』
なるほど、だから奥さんがどんな人なのか聞いてたんだ。 社交的なタイプだったら仲良くなりたいとかそんな話しか……
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