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仕事を早々終わらせた俺と桜課長は肩を並べ杉浦さんの家へと向かっていた。
「なんかたまにはこんな時間に上がるのもいいよね、
可笑しな話しだけど、課長に昇進する前まで私 ずっと定時で上がってたんだよ」
『桜課長って確かずっと部長の下で働いてたんですよね?』
過去の記憶を辿りそう呟けば彼女はゆっくりと頷き何故か寂しそうな笑顔を向ける。
「うん。 杉浦さんのチームにはとても入れなかったから…
実際仕事 出来る方じゃないしってそれは堀川くんも知ってるよね、同じフロアにいるし。
だから本当はなんで私が課長なんかになれたのか未だに分からないんだよね」
哀し気だけれど、その容姿のせいか可愛くふんわりと笑う彼女にそんな事ないですよと優しく伝えるけど、俺の言葉なんかは気休めにもならないだろう。
だけど実際、役職なんてないただの一社員の俺にその理由が分かるはずもなくて。
そのまま小さな沈黙が流れるけど、無理にそれを取り払うような事はしないで 小さく吹く夜の風を感じながらゆっくりと歩みを進めた。
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