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『え~っとあの、何か怒ってます?』
眉間にシワを寄せたまま無言でカップを手に取る杉浦さんがどうしても気になりそう声をかけてみた。
「どうして今日 彼女を連れて来た?」
チラっとリビングの方に向かわす彼の視線を辿るように俺もそっちを向きながら言葉を紡ぐ。
『彼女って桜課長っすか?』
「ああ」
『いやなんか色々話してるうちに菜緒ちゃんと合うんじゃないかな~っと思ったんですよ。
ほら菜緒ちゃんこないだ知り合いがみんな地元にしかいないから寂しいって言ってたし、桜課長も今日話し聞いてたら今の仕事に付いてから一緒に出掛けられる人がいなくなったなんて聞いて、これは菜緒ちゃんと仲良くなれたらいいかなって思ったんすよ』
ちょっと自信あり気にそう呟く俺を一瞥した杉浦さんは何故か豪快なため息を落としコーヒーメーカーを手に取りカップに注ぐ。
「だからって彼女はマズイだろ」
『え?』
マズイ? なんて目を丸くしている俺に淹れたばかりのコーヒーを手渡した杉浦さんは呆れたように首を振り桜課長の方へと歩いて行ってしまった。
通りすがりに
「この鈍感」
と一言残して。
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