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オレンジ一色だった空が、だんだんとその色を淡く優しく変えていく。
夕日はずっと向こうの山の端に静かに消えていき、それとともに空は淡いピンクに染まり始めた。
「…空が近いな」
そう言って穏やかに笑う彼の顔は、ひどく私の胸を打つ。
何も言えなくて、曖昧に笑うと視線を窓の外へと移した。
たった数分でこんなにも地上が遠くなることを、どうして私たちはあっさりと受け入れてしまえるのだろう。
再びまたあの場所に戻ることができると知っているからだろうか。
刻々と変わりゆく空の色。
動きを止めない自分の居場所。
それはまるで、これから先の私たちみたいだと思った。
決して口にはできなかったけれど。
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