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ジャリ、と小さな小石を敷き詰めた地面を踏む。小さく区切られた敷地が密集し、磨かれた御影石が光沢を放っている。
そこは彼らに用意された、安楽の地なのだろう。
そこに一人の男性が立っていた。彼はただ静かに、『光姫琥太郎』と彫られた石の表面を見つめている。
中性的で端正な顔立ちの男性だった。短く切られた髪の色はシルバーに近い金色だが、染めているようには見えない。そんな彼の周囲は、時間すら息を止めているのかと思える程に静かで、風の一吹きも感じられない。しかし、突然その口の端を薄く持ち上げると、蔑みとも喜びとも取れる表情を作り口を開いた。
「やっぱり生きてたんだ」
確信を確認した、そんな口振りだ。
「お前には敵わないな、寒波。ところで俺がいなくて寂しかったか?」
「貴方のその自信過剰なところ、変わりませんね」
彼が振り返ると、悪戯な表情を浮かべた男性が立っている。彼とは対照的に、茶色く染めた長めの髪から覗くその表情はとても男性的だ。
「俺は寂しかったけどな」
「そうは思えませんよ?」
そんな会話を交わしながら、二人の男性はその距離を縮めていく。
「いつ以来だ?」
「さあ?」
距離はもうお互いの呼吸すら感じるまでに縮まっていた。しかしどちらもそれ以上、動く事はなく、そこでただ対峙しているだけだった。
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