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ね?と那緒が笑うと、泣く寸前だった風伽はすくっと立ち上がり、エプロンの紐を結び直した。
「朝ごはん変更!お姉ちゃんの好きなだし巻き玉子にしまーす!!」
「いぇーい☆」
元気になった風伽は台所に飛び込み、だし巻き玉子を作り始めた。
長男の黒哉(くろや)はそんな様子を新聞片手に眺めている。
「那緒と風伽は仲良しですね」
「仲良すぎて困るけどな…部活間に合うかな?」
真澄が皮肉っぽく言うと、黒哉はどことなく喰えない笑みを浮かべた。
「貴方が自転車をとばせばいいと思いますよ?ここから学校まであまり遠くはないですから」
「部活前に余計な体力使いたくないんだけど」
「その余計な体力は有り余ってると思いますがね」
何気に酷い。黒哉は飄々とした掴めない性格で、たまに毒を吐く。生まれた頃から一緒の真澄でさえ何を考えているのかさっぱりわからないこともあるのだ。
真澄と黒哉が話している間に朝ごはんが出来たらしく、台所から玉子の甘い匂いがしてきた。
「お兄ちゃーん!真澄ー!ごはん出来たよー」
「早くしないとお味噌汁冷めちゃいますよー?」
「あー、今行く」
「真澄、貴方は急がないと部活に遅れると思うのですが?」
「え?あっ、やっば!?」
あわてて食卓に着き、風伽から茶碗を受けとり食べ始めた真澄、その前で楽しげに皿をつつく那緒と風伽。黒哉はさっきの喰えない笑みとは少し違った、兄としての表情になった。
(この子達を守らないと、ですねぇ)
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