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そんな事よりも今は仕事に集中しなくてはいけなかった。ネズミは気を引き締めるように前髪を弄った。昔からの癖で、何か決断をするときは決まって前髪を弄る。
仕事内容は死体の捜索だった。それにただの死体捜索ではない、警察よりも先に見つけ、処分しなくてはいけなかった。
「ったく、こんな所で自殺なんてするなよな面倒くせえ」
ネズミは地面に残る痕跡を探していた。足跡でも血の後でもいい。なんでもいいから何かないかと地面を凝視する。
すると、少し前に黒い革靴を見つけた。実際は茶色かもしれないが、薄暗い杉林の中では黒に見えた。
「これがあいつの物だとすると」とネズミが見切りを付けたように駆け足になった。
そしてすぐに止まる。鼻を突くような異臭で思わず足を止めてしまった。
目の前には大木がある。周りの木と比べ一際幹が太い。猛々しく伸ばす枝には縄が縛り付けられついて、その縄は人間の男の首を締めあげている。吊り下がっている男の下には排泄物がタレ流れていた。
ネズミは眉間に皺を寄せ、鼻を摘みながらなるべく呼吸をしないように縄を木から切り離す。
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