さよなら日常

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 涼子にとって、その日はいつも通りの普通の日のはずだった。普通に学校に行って、授業を受け、そのままテキトウに町をブラブラして…。それからいつもの通り家に帰ってまた明日になる。そうなるはずだった。しかし、現実に今彼女は、そのいつもの生活の枠から外れたところにいた。 「ツー、ツー、ツー」  規則的な生命維持装置の機械的な音。彼女は今酸素マスクをつけさせられて、病院のベットで横たわっていた。周りには涼子の父、母、そして弟がいて、3人とも涼子を必死な顔をして凝視していた。涼子の母親は、涼子の青白く力ない手を両手で握り締め、目に涙を浮かべ、 (あー神さまどうかこの子を助けて) と願いながら、さらに涼子の手を強く握った。  どうして涼子は今普段の普通の生活から離れて、こんなところにいるのか。…そう、あれは今日のお昼過ぎ、午後2時あたりのことだった。  午後2時、涼子の普通の生活はまだ続いていた。もちろん、その時の涼子は、これからふりかかる出来事のことなど知るよしもなかった。  高校3年生になる涼子は、最近早く下校できることが多くなってた。受験勉強のためだ。いつもは塾がこの後あるのだが、今日は塾の都合で休みだった。…行ければこんなことにならなかったかもしれない。 校門から出てスタスタ帰る涼子を、ある女の子が涼子を呼びながら走ってきた。 「りょ~こ~」 部活で一緒の薫だ。3年ではクラスが別だが、今でもよく一緒に帰る。 「あれ?涼子今日塾じゃなかったっけ?」 「あー、今日は塾休みなんだ~。吉祥寺でも寄ってから帰るつもり。薫も一緒に行く?」 「あーごめん、今日は中学の友達と映画見に行く約束してるんだ~。また今度誘ってよ」  こんなような会話をしながら、2人は駅に着き、お互い反対方向の電車に乗って別れた。その後涼子は吉祥寺で、なんの目的もなくただブラブラしてた。 「そろそろ帰るかな~」  6時を過ぎてた。夏が終わり、秋の夜は早い。もう大分暗くなってた。涼子の家の近くに行けば行くほど電灯の数が減っていく。塾の日はいつももっと遅いのに、中途半端に遅い時間だと余計なんとなく怖い。 (あ~、結構今日どうでもいいものばっかり買っちゃったな~。大してお金もないのにな~) 涼子がそんなことを考えながら、家の近くの十字路に差し掛かったその時…!
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