さよなら日常

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 彼はまだ涼子が助かるかもしれないという可能性について何も考えなかったのだろうか?ただ、この現場にこれ以上残っていたら危険だ、という考えが彼の脳を占領した。  彼は彼女のところから立ち去って一目散に自分のバイクのところに彼が今出せるだけの力を振り絞って走った。急いでバイクのエンジンをかける。変な音がするがまだバイクは動くようだ。それでそのまま立ち去るかと思いきや、彼はバイクで再び涼子に慌てて近づいた。彼女を助けようと思ってくれたのだろうか? …否、彼は脈を測った時の自分の指紋を取られたら危険だと思い、ふき取りに来ただけだった。持ってたボロキレで必死に彼女の手首を擦った。  それから彼は一目散にバイクに飛び乗り、すぐさまその現場から立ち去ってしまった。人手の少ないこの道路、涼子は次の通行人が通るまで20分間もその場に放置されてしまった。彼女の体は更に冷たくなっていた。
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