さよなら日常

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 涼子の目が…静かに開いたのだ。  一瞬、誰もが涼子が生き返ったと思って喜びを表わそうとした…がしかし、ちょっと待て、何かが変だ。数秒の間、そこにいた全員が少し混乱してた。  なんと、涼子の傍にある生態情報モニターの心拍数のラインは平らのままなのだ。…それはつまり、涼子の心臓は止まったままだということを意味する…はずである。彼女は生きてるのか?それとも…?  少し経って、やっと我に返った先生が、細く目を開けた涼子に恐る恐る近づき、彼女の今の状態を知ろうとした。 すると、ぼーっと薄目を開けていた涼子が、近づいてきた先生に気づいたらしい。 「あ…、え?私は…?」  あまり元気のない声だが、どうやら生きてる…らしい。涼子を不安にさせぬよう、先生は横目でもう一度、生態情報モニターを見た。…やっぱりまだ、心拍数のラインは平らのままだ。じゃあ一体この子はなんなのか?今まで色々な患者を診てきた先生でも、こんなケースは初めてだった。「心臓が止まっているのに生きてる」?  先生は自分の混乱する気持ちをなんとか抑えて、涼子と普通に喋ろうと努力する。 「あぁ…北村さん…、気分はどうですか?今ここが何処だか分かりますか…?」  今しがた生と死の間を彷徨ってた人間に「気分はどうですか」もへったくれもないもんだが、彼には今これぐらいのことしか思いつかなかった。涼子がさっきより元気な声で返事する。 「私は…どうしたんですか?ここは病院ですか?」  予想外にはっきりした声に先生は少しうろたえた。たった数分前までに死にそうだった人間が、ここまでちゃんと話せるものだろうか?
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