飴か鞭か、それとも愛か

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「何やってんだよ。 そんな暗いところで。 電気ぐらいつけたら?」 外回りから帰ってきた次の所長候補の坂本部長。 寄りにもよって、この人に… 聞かれた! みんな帰ったと思ったのに… 顔を上げることもできないまま、デスクに座り下を向く。 「ご主人といつ別れてくれるんですか…。」 亡霊のような生気のない声だったと思う。 気が付いたら、何度も掛けようとしてやめた番号を押していた。 会社の電話。 きっと、番号は通知されてるだろう。 と言うことは、会社の中に自分の旦那の浮気相手がいると解ったはず。 小さい会社。 女は数えるほどしかいない。 その中で、こんなことをする人間なんて探そうと思えばすぐに解るはずだ。 どうしよう。 どうしよう。 会社に居られなくなってしまう。 たいへんなこと、しちゃった… 電気がついて明るくなって… なにも言えずにただ、下を向いた。 聞かれた 聞かれた… 噂になっちゃう。 この人、きっと全部知ってる…
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