飴か鞭か、それとも愛か

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気が付いたらキスをしていた。 所長の胸にしがみつき、無我夢中だった。 焼酎の味のするキス。 それさえ嬉しくて、必死で胸元を掴んでいた。 息のできないほどの痛み 苦しくて、でも、嬉しくて… 唇を噛んで耐えた。 大学の時の友達が話していた。 初めての時は、スゴくスゴく痛いから、覚悟しなさいよって。 だから本当に好きな人にしか捧げちゃダメだって。 ゴメンって言った。所長。 何で謝るの…? 私から誘ったのに。 所長が好きだから、そうして欲しいと思ったのは私なんだから。 私の初めてを所長にあげたいと思ったのに。 謝るなんて… もっと女らしい体ならよかった。 そうしたら所長はもっと喜んでくれるのに。 筋肉質でペチャパイで、 もっとふわふわして抱き締めて気持ちいい体に生まれたかった。 でも、週に一度、所長は部屋に来てくれるようになった。 多分、所長は奥さんのところに帰ってない。 もう何ヶ月も。 単身赴任だから… いつかは本社に帰る人。 でも、休みは全部私にくれる。 数ヶ月に一度、本社の会議にでる時を除いては。 金曜日に支所長会議が有るのに、月曜日の朝に帰ってくるんだって。 絶対に奥さんとお子さんのところに帰るんだ。 わかってる。わかってて近づいたんだから。 でも、夜が怖い。 私にするようにキスをして、 熟した桃の皮を剥くように果実を露わにしていって、 それから… 頭が割れそう 心が壊れそう こんなことがきっとこれからも続くんだ。 所長が本社に帰って、もう会えなくなるまで。 月曜日に帰ってきた所長の顔を見ると、 顔色もよく妙につやつやとした肌が、奥さんとの交わりを表しているように思えて… 唇を噛んで溢れ出して来るものを隠した…
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