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「う~ん」
そろそろ8月半ばに差し掛かろうかという蒸し暑さだが、布都家の中は冷房で快適な環境が保たれている。
感慨深げに唸るその視線の先には布津家ご自慢のIHキッチンがあり、そこではエプロン姿の金髪碧眼の少女が料理をしている。
日本ではなかなかお目にかかれないレアな光景だろう。
「~~♪」
最近我が家に加わった新たな同居人である彼女が鼻歌交じりに料理をする様はどうみても家庭的な女の子だ。
やはり居候ってこうあるべきだ。別に仕事を押し付けるつもりはないが、気構えくらいはかくあるべき思う。
今度はリビングに目を向ける。
「ああぁぁぁあああ」
ソファに寝転び扇風機のプロペラに顔を近づけていまどき小学生でもやらないような遊びをすでに5分は続けているもう一人の同居人。
ワレワレハウチュウジンダーのヤツだ。
(この差は一体何なんだろうな……)
同じ同居人のはずなんだがこうも生活態度に差が出るものなのだろうか。
「出来まシタよ」
運ばれてきた料理を三人で囲む。
千年以上を生きる神、片や伝説に宿る精霊――――食卓を囲むうちの半数以上が普通じゃない。
唯一の人間である布都 夜刀も俗に言う普通から若干逸脱しているのではあるが……
「……暇だな」
その神であるところの神流がボソリと呟いた。
「そう思うなら仕事手伝えよ、穀潰し」
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