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「なにっ…いやそんなはずは……」
彼女は何やら写真を取り出して俺と見比べている。
まあどうせ遅刻してるしなんか俺に用事あるみたいだし少し付き合ってやるか。
「すまない…てっきり高坂由夜だと…」
「いや…それよりも由夜なら知ってますけど用事でもあるんですか?」
我ながら策士だ。彼女の考えを探り出すためのこの言い方。
ただ自分の名前を自分で言うと恥ずかしいな、うん間違いない。
「本当かっ」
「あ、ああ」
ぐっとこちらに寄ってきた彼女に後退りしてしまう。女性にはあまり耐性がない俺。
可愛いというか美人だな…静恵さんに近いスタイルだよ。
「ふむ、実は由夜と交わした約束を果たしにきたんだが…」
「約束ですか…へえ」
まさかとは思うが、結婚の約束の類とかラブコメにありがちなことじゃないよな。
いやありえないありえない。
清純な俺がそんな約束を簡単にするわけが…。
「うむ、だから由夜がいないと困るんだ私は…」
「他人が聞くのもあれなんですがその約束ってどんなことなんですか?」
「ああ、夫婦(めおと)の誓いを果たすためにだが…」
めおとって確か夫婦って意味だよな。
それはつまり俺が、同意したか自分から言ったわけで…。
なんだとっ。
俺の中の時間が完全に停止した瞬間だった。
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