ホテル

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 数回の呼び出し音を聞いたあとで、女性の声で電話に出た。 「kdfskrcんk」  アサス星の言語であった。米村は覚束ない、この星の言葉を使って自分が地球から来たことと、ホテルが泊まれるかどうかを聞いた。すると、電話の声が変わり、 「地球の方でしたか!どうぞ。ホテルは空いています」  急に流暢な地球の言葉になった。聞き慣れた言葉に、米村は安心してさっそく、数日分の予約をホテルに入れた。 「探せばあるものだな」  米村は自分の幸運に感謝した。看板に書かれていた地図を携帯のカメラで撮影すると、それを頼りにホテルへと向かった。  米村が予約したホテルは看板が立っていた場所から田舎道を一キロほど歩いた所にあった。 「これは・・・」  目的のホテルの前についた米村は言葉を失うと同時に、自分はキツネでも化かされているのではないかと思った。  何故なら、そのホテルはあまりにも豪華なのだ。都会にあった一流ホテルにも見劣りしない外見に内装。てっきり、田舎のホテルだからラブホみたいなのを想像していたが、全く違っていた。  豪華な造りしたホテルが何故、田舎にあるのかも不思議だったが、彼がもっとも疑問に感じたのは、客があまりにも少なかったことだ。これだけ、豪華ならばもっと、客が集まってもおかしくないはずだ。なのに、ホテルのロビーにいたのは数名の人とロボットが少し闊歩しているぐらいだった。 「ご予約の米村様ですね」 「はい」  エントランスで驚いている米村に美しい女性と彼女をサポートするロボットが声をかけてきた。米村は受付まで行くと、そこで数日分の宿泊代を支払って客室へと直行した。  ずっと、歩きっぱなしで疲れていた。食事は出ないホテルであったが、今はそんなことはどうでもよかった。疲れをとりたい一心でベッドへと倒れ込んだ。 「何だ?これ・・・」  ベッドに倒れ込んだ米村は違和感を感じた。ふかふかの暖かいベッドかと思っていたら、妙に堅かった。まるで、鉄板の上に煎餅布団でも敷いたかのような硬さだ。横になって寝心地のいいものではない。
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