第2話

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大人しくて、女子高でさえ目立たない存在だった香奈に、優斗と言う彼が出来た時は、真世は驚いたと同時に香奈が心配でならなかった。 その彼は金に物を言わせて、チャラチャラと遊んでいそうな感じがしたからだ。 実際に優斗はそう言う人物だった。 優斗にすれば、香奈は好都合な恋人だった。 田舎の練り物製造店を一代でST商事へと成長させた、やり手の優斗の父親、篠原孝蔵の権力は絶対だった。 それは、会社内でも篠原家親族に至るまでに及んでいた。 優斗は我儘息子ではあるが、そんな父親には頭が上がらない。 父親が我儘な優斗につけた条件は、必ずこの地域出身の娘と結婚することだった。 田舎者の代表者のような古い考えから来るもののように聞こえるが、相手の親族さえどこまでも抑えつけたい孝蔵のワンマンな考えからだろう。 それほどST商事はこの地域では名の知れた企業なのだ。 現に、二人の仲人は参議院議員の先生で公共事業と土建会社は切っても切り離せないものだ。 ST商事内の土建会社の取締役におさまっている優斗にとって、今後の社運を左右する人物であることは確かで地域の有権者であるST商事は議員先生にとっても選挙時には魅力あるものだろう。 そんな篠原家からすると香奈の家など蚤のようなものだ。 指先一つで潰すことができる。 優斗はそんな環境の香奈を気に入った。 自分に口応えする女などいらないそうで父親譲りのワンマンな男だった。 優斗は、口応えする女は全て切り捨てて来た。 それなりの報酬と呼べるものを与えて黙らせて来たのだ。 香奈以外にも、切り捨てられなかった女たちが今でも数人いるそうだ。 辛くもなんともないと香奈は笑う。
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