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僕は勇者だ!
我が国の王様が僕に対してそう仰ったのだから、それに間違いはない。
「たのもー!」
僕は今、魔王城の魔王の間に突入したのである。そして、我が宿敵――魔王と対峙する。
僕は緊張を覚えていた。
勇者の使命は、『魔族の撲滅』だ。なのだから、その長を討伐するということは、その目的の大半を制するに等しく――つまり、非常に重要な対戦となるんだ。
僕の心臓が早鐘のように鼓動するのも仕方ないと言えよう。
だと言うのに――
「ふむ、貴様。たった一人で来たのか」
僕の目の前で、漆黒の外套を纏った魔王らしき人物はクククと嘲笑しやがった。
「魔王……お、お前も、王様と同じ事を言うのかっ!」
何故だ!
どうしてどうしてどーしてだっ!
なぜ、単身で魔王城に乗り込む事に対し、ドイツもコイツも僕を馬鹿にしたような態度をとるのだろう?
全く訳がわからないっ!
「? 貴様が何を言っているのか解らんが、さあ剣を取れ。戦おうではないか」
え? と僕は驚く。
「どうした? 何をしている? 哀れな人間よ」
いや、だってさ。だってだよ。
「そこは普通『貴様に世界の半分をやる、だから、どうだ、私の仲間にならないか?』って聞く場面でしょ!」
「……下らん。それは、私に対する侮蔑か?」
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