魔王と僕は戦った

2/7
前へ
/49ページ
次へ
 僕は勇者だ!  我が国の王様が僕に対してそう仰ったのだから、それに間違いはない。  「たのもー!」  僕は今、魔王城の魔王の間に突入したのである。そして、我が宿敵――魔王と対峙する。  僕は緊張を覚えていた。  勇者の使命は、『魔族の撲滅』だ。なのだから、その長を討伐するということは、その目的の大半を制するに等しく――つまり、非常に重要な対戦となるんだ。  僕の心臓が早鐘のように鼓動するのも仕方ないと言えよう。  だと言うのに――  「ふむ、貴様。たった一人で来たのか」  僕の目の前で、漆黒の外套を纏った魔王らしき人物はクククと嘲笑しやがった。  「魔王……お、お前も、王様と同じ事を言うのかっ!」  何故だ!  どうしてどうしてどーしてだっ!  なぜ、単身で魔王城に乗り込む事に対し、ドイツもコイツも僕を馬鹿にしたような態度をとるのだろう?  全く訳がわからないっ!  「? 貴様が何を言っているのか解らんが、さあ剣を取れ。戦おうではないか」  え? と僕は驚く。  「どうした? 何をしている? 哀れな人間よ」  いや、だってさ。だってだよ。  「そこは普通『貴様に世界の半分をやる、だから、どうだ、私の仲間にならないか?』って聞く場面でしょ!」  「……下らん。それは、私に対する侮蔑か?」
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加