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う、うお。何だこの殺意は。怖い。魔王、怖すぎ。背中が粟立ったよ、マジで。威圧が凄い。
「いやー、侮蔑なんて……そんな事するわけないじゃないですかー。で、どうですか? 僕を魔族に加えるつもりは?」
「ない」
「デ、デスヨネー」
まっずい。これはまずい。魔王の一味になる算段だったのに……ということはないけどさ。段取りってものがあるでしょっ!
だと言うのに、この魔王……真面目すぎるのがいけない。僕はただ至極真っ当なことを言っただけなのに、結果的に怒らせてしまったよ。
ピンチ。僕、大ピンチ!
「戯言は終わりだっ! 行くぞっ!」
「う、おおっ!」
魔王が一歩踏み出した!
と思った時には、もう既に僕の一寸先まで肉薄。
その手にはシャンデリアの光を受けて鮮やかに輝く白銀の直剣 ――
間一髪。
横一文字に振られたその得物を、己の持つ瞬発力を最大限に活かし、後ろへと跳躍する事で回避してみせる。
「まだまだ行くぞっ!」
鬼のような気迫で、魔王は更なる追撃を。
「暴力反対!」
そうだよ。僕たちは知能を持った種族なんだ。何故、こうやって戦わねばならないのだろうか? だろ?
僕がそんな悟りを開いているにも関わらず、酷き事かな。魔王はその攻撃の手を緩めようとしてくれないのである。仕舞にゃ泣くぞ、こん畜生がっ!
「さっさと切り捨てられろ! 下等な人間よ!」
「ぜっっったいにヤダ!」
魔王の剣捌きは認めたくないけれど素晴らし過ぎる。足の運び、重心の移動、剣の振り方――どれをとっても完璧で、一瞬も気を抜けない。
まあ、僕もね、勇者を名乗るぐらいですから、なんとかその猛攻を避けてはいます。だがしかし、剣を抜く暇も与えてくれないものですから……畜生! 反撃出来ないじゃん!
隙を作ってくれる仲間が欲しいよ! なんで連れて来なかったんだろう! 自分のおバカ!
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