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ボクは嫌な感じに脈を打つ心臓の辺りをギュッと掴んで、バレないようにゆっくりと空気を吐いて吸い込んだ。
それでも押し潰されそうな感覚になって目は伏せる。
「キスしてましたよね?一緒に授業をする2人がそういう間柄になってしまうのは些か問題なのでは?それに成瀬先生は以前から如月先生と噂になっていましたよね?若いとはいえ教員が複数人と噂になる事については教育者としてどうお考えですか?」
こうやって黙って責められている灰を見るのは結構ツラい。ここで「異議あり!」とか「もっとマシな質問をしたらどうですか?」とか噛み付いて灰を助けたいが、そんな勇気はボクにはなかった。
「それで良く国語団の副教科長なんて務まりますね? あぁ、国語団だから成瀬先生のような方でも務まるんですかね。だいたいOBだからといって好き勝手し過ぎなんじゃないですか?他の先生方もペコペコしすぎだと思います。それにやっぱり生徒会顧問も副教科長の座もコネなんでしょ?」
良く喋るし、ムカつく!
「あのー、少し良いですか?」
手を挙げたのは何故か小野塚先生。今は全職員の視線、意識の中心にいる。
「今の岸島先生の発言はなんの根拠もない、ただの妬みに聞こえますが?何が」
「小野塚先生に今発言権は無い!それとも恋人を庇護する発言ですか!?」
スッと席に座った小野塚先生と目が合う。ニコッと優越感に溢れたような表情は見間違えじゃない。ボクはムッとして多分感情を隠さないで表してしまっている。
「言いたい事はそれだけで良いですか?岸島先生」
別に焦る様子も無い驚くほど普通の灰が質疑の応答を始める。
「まず職員室での噂の件ですが、俺はキスをしたとは認識していません。確かに事故はありましたが、事故は事故です。それだけです」
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