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恥ずかしいが溢れ出てきて、会議が終わってからも一歩も動けないし、顔さえ上げられなかった。
大槻先生と青木先生が何か声を掛けてくれたんだけど、頭には残らなかった。
静かなだけの広い会議室に足音が響く。
「…怒りたかったら怒れよ」
頭に優しい重さが乗っかる。
「……何に怒れば良いの?」
「色々」
少し意地悪をしてみたかったのに、灰は言葉に詰まる様子もなく、解釈はボクに委ねた。
「…事故でも言って欲しかった」
「だよな」
「でも謝らないで。ただの事故なんだから」
自分の思ってることがグチャグチャで、小野塚先生との事故は本当だったんだとか、隠してたのは何でとか頭の中をグルグルしてるのにそれを塗り潰すように、 灰に愛されてるという実感にほだされて動けない。
「雪こっち向いて」
ボクの輪郭をなぞって下りていく指に意識が移る。
顔を上げると少し心配そうにボクを窺っていた灰と目があった。
「怒ってないよ。でも…」
そこで口は閉じきった。
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