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続く言葉はどう考えても利己的でわがままで、自分勝手なボクを表してしまいそうだった。
灰の表情はいっそう不安そうに映る。
座っていた椅子から少し腰を上げて、灰の唇に自分の唇を押し付けた。反応しきれずにいる灰を待つこともなく後ろ首に腕を回しボクの方に引き寄せる。
同じ温度になる唇を割って舌を絡ませようとすると灰もボクの髪に指を差し込み呆れる事もなく応えてくれた。
会議室内に相応しく無い音が耳から入ってくる。
うっすら目を開けると至近距離で目があった。唇を離す。
「…何で目開けてるの?」
「いや、いきなりの事でびっくりして」
余裕すら見える表情をボクに向けながらそんな事をサラリと口にする。灰の指がボクの髪をクルクルと弄んでいる。
「うそ。だって最後の方は灰のペースだった」
ボクの答えに嬉しそうに笑った灰が額に子どもを宥めるようなキスをした。
「悪い。必死な雪が可愛すぎて、つい」
悪びれもしない灰に口が尖る。
「必死だよ。だって大好きなんだから」
灰は何も言わずにボクの手を引いた。この雰囲気には覚えがあるが今日は場所を理由に断ることはしない。
ボクは黙ってその手に従った。
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