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今年は去年のスタジアムと違いグランドなので応援席と競技スペースが近く生徒たちの興奮も一段と大きいように感じる。
「あ、成瀬先生こっち見てます!」
その声に視線を戻すと遠目でも目が合った事が分かった。控え目に手を振ってみると、灰も手を上げて応えてくれた。何かムズムズする温かさがある。
「先生ほっぺた緩んでますよぉー」
「如月先生もジャージ着たら良いのに!出来ればお揃いの」
やいやい広がる生徒たちの言葉にパタンと耳の扉を閉じて、聞こえない振り。
てか、春くんの隣りにいるの秋くんじゃない!?えっ!ちょ、ちょっと会長と風紀委員長が並んで談笑してるんですけど!わっ秋くん春くんの髪触ってちょっかい出してる!何!?え、てか灰そんな特等席でよくそんな普通に出来るね!ボクと場所変われ!
みんな思う所は一緒のようで、救護テントから視線は一カ所に集まり、しかし会話は一切なく静寂の中、保健委員会は無表情で生徒会本部テントを鑑賞していた。
そんな異様な光景にボクは気付くわけもなく、その光景の一部になっていた。
『それでは一種目の競技100メートル走始まります!本日の実況は放送部青葉夏が担当させていただきますぞ!』
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