2705人が本棚に入れています
本棚に追加
招集された職員は後ろの方に並ぶよう言われ、ぼーっとしているうちに最後のトリを飾るグループになってしまった。ハッと気づき状況を理解すると同時に内心地面を叩く。それも…。
「よろしくね。如月先生?」
「…小野塚先生」
にっこりと裏表無いような笑顔を向けてくる。ジャージ姿の小野塚先生はなんだか職員と呼ぶには幼いように見えた。生徒たちからの視線は集まっている。
この人と走るのか…やだな。
表情を暗くする考えばかり過ぎる頭を無理やり起こす。苦手なものは仕方無いと体内に溜まった空気を吐き出して前だけを見た。
借り物競争…見る分には良いけど実際出るのはなぁ…何がでるか分からないし、結構教師にはキツいお題ばっかりだし。
レースが進む度に一歩一歩スタート位置に近付いていく。
グランドに出てみなきゃ分からない熱気を感じる。生徒たちの歓声や太鼓などで応援する音。そんな熱をボクはどこかお客さんのように眺めているような気分だった。
熱い。
滲み始めた汗に気付く。白衣くらい脱いでくれば良かった。はぁ、と後悔しても意地悪なくらい降り注ぐ太陽の熱が和らぐ事は無い。
「位置についてよーい、」
パーンッ
スターターピストルの銃声が迫っている。じわじわと緊張感なのか落ち着かなくなってきた。
そう言えばボクって走れるんだっけ?最後に走ったのっていつ?あれ?ボクって運動できたっけ?
ポンッと浮かんだ疑問から焦りが広がっていく。ジリジリ焼くように照りつける日射は変わらないのに頭の中が妙にヒンヤリしてきた。凄い気持ち悪い感覚だ。
最初のコメントを投稿しよう!