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「そうか?鈴城はずいぶん雰囲気変わったと思ったけどな」
「そりゃあ、鈴城くんは灰の前だと何というかお淑やかというか慎ましくしてたからね。あれが素だよ可愛いでしょ」
「ふーん」
ボクが運ぼうとしたトレイは灰に持ち上げられた。普段通りの灰の横顔を眺める。
「…あの灰。今日は色々とごめんね。ボクがあんな勝手な行動とっちゃったからこれからかなり迷惑掛けると思うし、」
「だから雪が謝るのは違う。これからの事は一緒に考えて行けばいいし、あんまり1人で考えすぎるな……それに俺が謝ろうとしてんのに先に謝るなよ」
灰の言葉を理解しきれないでジッと灰を見つめていると。困ったような表情の灰に視線を落とされる。
「えっ、と……?」
シンクへ運ばれるはずだったティーカップ達の乗るトレイは一旦テーブルに戻された。それを目で追って確認する。
灰が改まったようにボクに向き合って変に動揺するのはボクの方だ。そわそわして落ち着かない。
「告白の事、あれで2回目だった。ごめん黙ってて。ちゃんと断ったけど、雪には言うべきだったよな。ごめん」
頭まで下げる灰に更にワタワタしてしまう。すぐに灰の両頬を手で挟み顔を上げさせる。納得してないような灰の表情が見えた。
「…あ、ごめん。なんか落ち着かなくて…。灰も謝らなくて良いよ?まぁ言ってほしかったけど、でも薄々気付いてた気もするし、断ってくれるって信用もしてるし、大丈夫。でも言ってくれて、ありがとう」
灰はボクの腕をとり引き寄せ抱き締めた。
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