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「…教長この後少し話があります………雪は仕事に戻れるか?」
そうしたら、しばらくは直接会えないんだよ?分かってる?
自分が嫌になるくらい女々しいと分かっているから口はギュッと閉じきって、静かに頷く。
「俺がいなくても、しっかりご飯食べろよ?」
「…大丈夫ですよ。ボクはこどもじゃないんですから」
最後に掛ける言葉がボクの生活面の心配。いつもはくすぐったいようなこども扱いも今は何だか虚しい。
気持ちに余裕がない。無いから灰を見れないんだ。
「ではボクはこれで失礼します。 」
灰に文句の一つや二つ、いや思ったこと全部言いつけたかったけど教科長がいる今それは出来なくて開きかけた役立たずの口は何も音を出すこともせずに閉じた。
そんなボクがお辞儀をして部屋から出ようとすると灰は髪をひと撫でだけ触れた。もうそれがとどめだった。
あ、何か泣きそうだ。
振り向かないで足早に部屋を出て扉を閉める。重い背中を扉に預けて気持ちの悪い空気を吐き出した。
ムカつく。教科長も呆気なく承諾した灰も少しだけムカつく。あとこんな時も自分の事しか考えられない自分もムカつく、イライラする。
ダンッと後頭部を扉にぶつけた。ボクの不機嫌が扉の向こうに知られても構わない。知ればいい。
「…むかつく」
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