scene009

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「はいっホスト教師からのお手紙ですぞ」 ウハッとウインクを決められたが、残念ながらそのノリに合わせられるほどの過大な余裕は持ち合わせていない。 夏くんの手には折り畳まれた紙があって、ボクは無言でその特別普通に見える手紙を受け取り、自分のポケットにそのまま入れた。 「あれ?今日は読まないんですか?」 「…寝る前に読むってさっき決めた」 ニヤニヤする夏くんは「大事に夜読んでください」といらない一言を付け加えた。 灰からの手紙、何故かメールはしてこないのにこんな手元に残るようなメッセージを毎日伝書鳩係りの夏くんに持たせる。 内容の8割りはご飯は食べてるのかとかちゃんと起きてるのかとか甘いものは食べ過ぎるなよとか本当に恋人に向けての手紙なのか疑いたくなるような言葉ばかり。 「こども扱いなんだよー…」 いきなりソファーにうずくまったボクに夏くんが驚いた声を出す。何故か撫でてくる手をやんわりと払い顔だけ向ける。 「何かさー限界来てるのボクだけだし、灰なんて凄く普通で怖いくらい普通で、……小野塚先生は本当にお咎め無しで今も灰と授業してるんでしょ?もうなんなの!とか思うし…」 そう口にしながら、こういう所がこどもっぽいって思われるんだって気が付く。 「ごめん、今の無しでにして?」
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