scene009

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夏くんが違和感のある穏やかな微笑みを浮かべて、手に持っていた生徒会の仕事であろう書類をとても丁寧に目の前のテーブルに置いた。ボクの向かい側に腰を下ろす夏くんの笑みは一瞬も崩れない。 「…夏くん、なんか怖いよ?」 「そうなこと無いですぞ?如月先生。良いんです、弱みを見せても良いんです。愚痴をもらしても良いんです。その姿を見る度にホスト教師の事を想い、心を痛める如月先生の儚さが際立っているのですぞ?あぁ、何とも無いような距離も姿が見えるだけで触れられないもどかしさはある意味会えないよりも辛いっ…!なんて素晴らしい展開。ご馳走になります」 夏くんにしては声量も小さく抑揚も少ないこの語りにボクは大きく溜め息をついた。 「ボクは腐男子の餌になる気はないよ?」 「何を今更仰いますか」 ご冗談を~と嫌みなくらい明るくボクの目の前で掌を振る夏くんに許される範囲で鋭い視線を投げつければ、ピッと背筋が伸びる。 「こっちは大真面目に悩んでるんです」 おまけとばかりにギロッと夏くんの目を見れば腐男子モードを切り替えてくれ申し訳無さそうに口を開いた。 「…すみません。でもまぁ、大人しくしてるしか無いですぞ、今は。ホスト教師がなんであんなに冷静見繕ってるのか分からないですけど、…ホスト教師の事です如月先生にマイナスな事はしませんよ。何か理由があるんですよ」 「理由?」
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