scene009

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その顔は難問を叩きつけられたような表情を浮かべている。それも古典の勉強中に良く見るとても渋い顔だ。 「そんなに悩んでもボクは書かないからね手紙」 「何でそんなに頑ななんですか?」 パッと顔を上げた夏くんが本当に疑問を投げ掛けるような意外にも純な目をしていた。そんな彼に動揺したのか驚いたのかポロッと言葉が落ちる。それを拾い上げるには聞いてしまっていた夏くんの目は輝き過ぎていた。 「だって何か負けた気になるし…あ」 「それはホスト教師に?小野塚先生に?それとも説教してきた主任の先生に?」 スイッチが綺麗に押し変わった夏くんに溜め息しかでない。まぁこんな女々しい本音を口に出来るのも彼の前だからという事もあるので、そのまま言葉は続ける。 「……8割は灰かな、まぁ1人で拗ねてるだけだけど」 眩しすぎる光線は向かい側から、鬱陶しそうに視線を向ければまた器用にもスイッチを変えた。 「でも、まぁ先生が書きたくないなら無理押しはしませんが、書いたらホスト教師すっごく喜びますぞ」 特別でっかいウィンクを貰ったところでボクは考えを変える気はないし、こっちも意地になる。
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