scene009

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青葉夏side(伝書鳩になる少し前) 確かにおかしい。 相変わらず澄ました顔で授業を進めるホスト教師を眺め見ながら俺は思う。やっぱりおかしい。 最早、異国の言葉に聞こえる教科書の文章を読み上げるホスト教師の声は俺の頭には入ってこなかった。 体育祭翌日に3学年主任から呼び出しがあったのは学園中に広まっており、その内容も私用での接触は控えるということだと号外が出ていた。恐るべし情報部。新聞部から名前を変えても変わらずの情報収集に対するエグサがある。そして写真部もとい写真同好会のパパラッチ具合も見事であった。 号外に載ってた、主任の説教をくらう2人の姿を浮かべる。 「…にしても」 俺の感じる大きすぎる違和感は授業中に薄まるどころか益々強く訴えかけてくる。 クラス中が静かに混乱しているのが見て取れる。 ホスト教師が主任命令で如月先生との接触を禁止された。そう聞いた俺達は戦慄した。今までの数々のトラウマを呼び起こさせ失神する者もいたほどだ。神に祈りを捧げるものが現れても気味悪がる奴なんていなかった。 そして俺達はめちゃくちゃに勉強した。古典を。それもクラス一丸となって次の授業範囲を完璧と思うまで寝なかった。(クラスみんなで朝を迎えるという結果となってしまったが) その理由は簡単。史上最強に機嫌の悪いであろう担任様が行うサスペンスばりの授業を最小限の被害で乗り越える為だ。 ホスト教師が行う授業の5分前にはクラスは静まり返っていた。怖い程に聞こえない音と重い空気。誰かが唾を飲み込んだ。震える手は冷たい。 授業開始の鐘が処刑の合図のよう聞こえガラガラと無慈悲に扉は開いたのだった。
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