scene009

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悪い事は続くもので はぁ、と吐き出した見えない息は保健室の床にぼたりと落ちて広がった。窓に当たる雨の音も相まってここ一帯の空気には重さがある。 「…如月先生、そんな…あの、俺らこれが嘘だって分かってますしっ…!」 「そうそうっ!こんな証拠も薄いような記事を鵜呑みにする人なんて少ないですよぉ!」 「そうですよ!必死な話題作りホントお疲れって感じですよね!?」 両隣ではボクを励ますように保健委員が声をかけ続けていた。 テーブルに上がる記事を視線で拾ってしまう。 『如月雪 複数生徒と密会!?』 内容は灰と会えないこの時を狙って様々な生徒と関係を持っているという内容だ。今は薄れたボクの噂を引っ張り出して記事に絡めて、灰との関係も歪めて載せられている。 写真は数枚、1年生らしき生徒を抱き締めているように見える写真。サッカー部の生徒に髪を撫でられているような写真。ほか数枚も隠し撮りのタイミングは非常に上手く誤解されるような物ばかりだった。 どうしよう、全然覚えがない。 強引に見せ付けるような見出し・写真にまた無意識なため息が洩れる。 後ろから手が伸びてきて突然口を塞がれた。 「ため息ばっかりだと本当に幸せ逃げちゃいますよ?」
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