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妙に落ち着いた声の元を辿ると保健委員長の堤くん。
「委員長っ!よくもそんなに落ち着いてられるな!如月先生のピンチだぞ!?感じろこの空気感を!」
そうだそうだっ!と保健室中からのブーイングにもめげた様子を見せない彼はボクの口を塞いだまま演技めいた口調で話し出す。
「如月先生が魔性の男で数人の生徒と関係を持ってる?成瀬先生と会えない事を良いことに?それが有り得ない事だって長年観さ…長年委員会で一緒にいれば分かる事だ。そう重要なところはそこ、人によって性格の認識に差が出来るってこと。つまりは世間では遊び人・ビッチ認識されてる人が意外に純粋だったり攻めに一途だったりする受けが好きってこと俺が。そう、つまりはそういうことだ」
「どういうことだよ。最低」
「うわっ、如月先生になんて事を」
口を塞ぎ続ける掌に気持ちを込めて抓ってみれば、一瞬で離れた。正直に堤くんを睨んでやった。
「…面白がらないでください」
「すみません!そうじゃなくて俺が言いたいのは、攻め、じゃなくて成瀬先生は如月先生の事しっかり理解してるので変に誤解しませんよ。って事です!成瀬先生はこれくらいじゃ揺れませんよ!…ここに載った生徒達の運命は知りませんが…」
変わり身早く周りの委員の子達も「そうですよ!成瀬先生は信じませんよ!」「成瀬先生なら鼻で笑っておしまいですよ!」など口々に励ましを掛けてくる。
みんなはボクが灰に誤解される事を気に思って落ち込んでると感じているようだった。
確かにそれもある。この顔も合わせず言い訳も出来ない状況での号外の内容は最悪で、見えない灰の心情を探った時もあった。それが無意味で滑稽な事だと頭で理解している。
それよりもボクは、ただただその号外が、その内容が、本当にショックだったんだ。
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