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溜まっていた重い空気を小さく小さく出したはずだったが、敏い秋くんに「大丈夫ですか?」と声を掛けられてしまった。
部屋中の目がボクに集まる。
「いえ、ちょっと………あの…その警護って辞退できますか?」
多分、予想外の言葉だったのだろう。戸惑いのある詰まった音が聞こえてきそうだ。
「……その理由はなんですか?」
「見合う理由があれば辞退出来るということですか?」
「なんです!?折角の成瀬先生からの援護射撃を無下に!!はっ!そうか今は成瀬先生にイライラ反抗期ですもんね!ちょっと天邪鬼も」
そろそろソファーの上に立つ堤くんの裾を引っ張って座らせる。座らせると言うよりはバランスを崩してソファーから落ちてしまったが。
「如月先生…今回の警護の件は成瀬先生では無く生徒会からの」
「生徒会!?あっ!そっか会長はあの待って、それで風紀は素直に動くのか!?今年度の生徒会と風紀って!!なるほどトップ同士の関係性が組織の関係性に!?まるで王妃と騎士」
「…ちょっとすみません」
秋くんに一言断りを入れてから堤くんの頬をグッと両手で挟み、風紀には見えないように後ろを向かせる。出来るだけ低い声を意識して目元に力を入れる。
「委員長?少々お喋りが過ぎませんか?邪魔なのであっちで自分の鞄を守ってましょうね?」
「…ふぁい!!」
弾けるようにボクから離れた堤くんは本当に自然にあのペンギンの群れに紛れた。啜り泣く声が聞こえてきそうだ。
「お待たせしてしまい、すみません」
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