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やかんからポットに水を入れ蓋を閉めるとポットは小さな音を出して自分が働いている事を知らせてくる。
ボクはそれを暫く眺めているとポケットの中で着信を知らせるものがあった。
「…姉さん?」
あまり出たくない気もしたが、出なければ後が怖いので、選択肢などなく応答する。
「…もしもし」
「あら随分素直に出たのね」
意外そうな明るい声が耳にすんなりと入ってきた。なんだか少しだけ気持ちが落ち着く。やっぱり家族の声は安心するらしい。
「今ちょっと大丈夫かしら?」
「大丈夫だけど…何?いつもそんな事聞かないじゃん、どうしたの?」
ポットの温度はなかなか上がらず38℃。示された数字を意味もなく指でなぞった。
「別に理由なんて無いわ。今どこで何してるの?」
「…部屋でお湯沸してご飯」
「カップ麺?…まぁ食べる事は食べてるのね」
安堵したような声色を聞かせてくる姉に引っかかりを感じ、特に遠慮もなくその言葉を渡す。
「灰からの探り?」
「ふふっ、そうよ。…というかアンタ灰から離れるだけで面白いくらい生活の質落ちるわねぇ」
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