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あっさりと自供した姉さんは灰と完全に協力関係にあるわけでは無さそうだ。
「…心配してた?」
「アンタの事?そりゃあ心配なんじゃない?顔色悪かったって言ってたわ。ちゃんと食べて寝てる?」
直接灰の声で聞きたい。浮かんだ我が儘は形を変えて姉さんに向けた意味の無い言葉になった。
「食べてない寝てない。てかご飯美味しくない。まずい。食べたくない、でも食べなきゃ」
「…はぁ、私に甘えてもしょうがないでしょ?……やっぱり胃袋掴むのは正解ね。相手の生活の一部を自分が支配出来るもの」
「…何の話?」
「私の高尚な趣味の話」
悪びれもせず言い切った姉さんのくすくすと笑った声がボクの耳を擽る。
「ゔーっ灰の手料理食べたい。灰のハンバーグ食べたい!煮た人参がないやつ!あとシチュー!パセリ抜いたの!インスタントなんてっ美味しくない!!」
今はお湯も入ってない固まった麺の入った容器を睨みつけた。睨みつけても平気そうなカップ麺は今か今かとお湯が湧くのをただ待っているようだった。
「そんなに食べたいならこっそり会いに行けば良いじゃない。バレなきゃ良いのよ」
「むり、……灰はどこまで姉さんに話してるの?」
正直羨ましい。ぽろりと口から出そうになった本音をギリギリで飲み込んだ。
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