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「怖がってるじゃないっ。言っておきますけど、灰は貴方に勝てないわ」
「…どういう事?」
非常に愉しそうに高笑いをした姉さんは意味を理解しかねる言葉を容赦無くボクに突き付けた。ただその意味をボクに親切に教える気なんて更々ないように感じる。
「灰はバカ男じゃないって事。それに私との約束もあるし、泣き付く貴方をアイツは振りほどけないわ」
「泣き付かないから」
意図的に作り出されたような音の無い時間で姉さんは言いたいことをボクにうんと伝えてきてとても煩かった。
「雪が我慢強くない事は灰も知っているし、会いに行っても雪が考えているような反応なんてされないわよ。というか今まで我慢してたのが驚きね。どこでそんなにプライド育てたの?」
「…もう切る」
笑い声で謝ってもらっても納得出来ない事を姉さんは知っているのだろうか。
「じゃあ、これから灰に連絡するけど何か伝えたいことはある?」
「何も無いです」
ふーん。と明るい声質でなじった姉さんは特にボクから言葉を引き出そうともせずに、躊躇もなく通話を終わらせた。
また自分だけの世界に戻ってきた。そんなボクと1番最初に目が合ったのが蓋を中途半端に開けたカップ麺で、とっくに水をお湯に変えたポットの横で自分の番を待っている。
「…3分待っても美味しくないじゃん」
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