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不摂生な生活も薄ら慣れ始めてくる。毎日欠かさず飛んでくる伝書鳩の手紙だけが潜り込んだ寂しさを気付かせてきた。
いつまで耐えればいいか分からない時を出来るだけ目立たないように過ごし、情報部が喜ぶような餌にならないように保健室に篭った。
「…それでも、こうなるのか」
ある部屋の扉をノック出来ずにいる。扉の横には国語団教科長室の文字。
呼び出しは予想もしていたが、気の進むものでも無かった。ノックをする為に作った拳が扉から近付いたり離れたりする。
「……」
帰ろうかな。と浮かんだ言葉に息を吐き出し扉を睨みつけながら美味しいとは言えない空気をいっぱいに吸い込んだ。
よし、と心の中で3秒数えてトントントンッとノックをする。音にも表れた弱々しさにグッと睨む目に力が入る。
数秒経っても中から「どうぞ」の一言が聞こえてこない。逃げてしまおうかと瞬時に頭を過ぎったが、再度呼吸を整えもう一度だけ扉を叩いた。
「はい、どうぞ」
当然に聞こえてくる教科長の声に大袈裟なくらいビクついた。
「……失礼します」
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