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冷静で威圧的な五十嵐先生の言葉の中に大好き名前があった。意味もなく背筋が伸びる。
「私は成瀬先生が私情で手を抜くような人では無いと思っているがね。一緒に授業をしていた小野塚先生なら分かっているだろう?贔屓無い生徒への姿勢も評価しているし、この仕事を誇りに思っているからこそ私の後任に成瀬先生を選んだんだよ」
「ですが、」
「もうこの話しはお終いにしよう。時間だ」
横目で3人のやり取りを見ていると納得していない様子の小野塚先生の隣りで五十嵐先生が丁寧にお辞儀をしたのが見えた。振り返りそうなので慌てて目を伏せる。
「それでは失礼します」
五十嵐先生の後に続いて小野塚先生の内心のモヤモヤが表れているような呟く程度の挨拶が聞こえた。
好奇心だったのか気になってチラッと顔を上げると小野塚先生とバッチリ目が合ってしまった。
うわっ、睨まれてる。
負けずに睨み返そうとしたが大人気ない気がして平然を装い軽く会釈をした。もちろん返されることは無い。
「悪かったね如月先生。待たせてしまって」
「えっ、いえ!」
2人が扉を閉める音に被せて教科長が声を掛けてくる。ボクは慌てて立ち上がり教科長の机の前に身体を置いた。
なんだか緊張感がドンと戻ってきた。
怖い。教科長の普段と変わらない表情が何を考えているの分からなくて怖い。
「こっちもバタバタしていて、すまなかったね」
「いえいえ、」
先程の会話の内容がとっても気になるが、ここで教科長に聞く勇気をボクは持ち合わせてない。
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