scene009

38/49

2705人が本棚に入れています
本棚に追加
/347ページ
「さっきの話しは聞いていたかね?」 思ってもみない教科長からの質問にドキンと胸が鳴って変な汗が出てきた。 何が正解!?なんて答えたら正解!? と頭の中でバタバタに暴れ回っているうちに口が勝手に「あ、いや、あの少しだけ」ともらしていた。 自分のアホっぽさに呆れる隙もなく教科長がボクの思考を連れ去る話題を口にし始めた。 「今国語科を成瀬先生に任せていてね。まぁ、それには何の問題もないんだけど」 この人は凄い事を言う。 「……あの、ボクにそれ話しても大丈夫なんですか?」 「ん?どうせ、いつか君の耳にも入ってくる事だよ」 そのまま穏やかに国語団の内情を話す教科長にボクの方が落ち着かない。 「革命的だね彼はやっぱり。古文だけじゃない現代文、漢文、小論…自分が動かせる瞬間にもう体制から変えてしまったよ。任せるのは期間限定なはずだがやってくれるよ」 自分が築き上げた体制を躊躇無く壊したであろう灰について嬉しそうな声で話す教科長。 「…あの、ボクが口を挟む立場ではないとは思いますが、良いんですか?…そこまで任せてしまって」 教科長が唯一握っていた灰への細い手綱を離した事になっている。あの男なら立場も関係なく徹底的に自分の国語団に変えてしまうだろう。
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2705人が本棚に入れています
本棚に追加