scene009

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熱くなる目頭に力を入れる。それで睨むことになっても構わない。 「……驚いたな。昔から成瀬先生が一方的に甘やかしてるのだと思っていたよ」 「…それだから、こうなってるんですよ」 彼はやはり策士という訳かといらぬ事を口にする。 ふぅ、と身体に溜まった空気を吐き出してスゥっと新しい空気を入れる。教科長と目が合った。 1歩下がって頭を下げる。躊躇うことも無かった。 「お願いします。どうか成瀬先生をボクに返してください。生徒に悪影響だって離されたのに号外出されたのも駄目だって分かってます!分かってるんですけど、それでも成瀬先生がボクには必要なんです!お願いします!このままじゃ、おかしくなるっ」 馬鹿な事を言っている。 教科長が、はぁーっと長い息を吐ききった。 「…あと1週間だ。成瀬先生との約束で一ヶ月で結果を見せろと言ってある。私としては十分過ぎるくらいの働きを見せてもらったが、最後に彼の我儘を聞かなきゃならないんだよ。まぁ、これも結果次第なんだけど…顔を上げなさい」 静かに身体を起こし、穏やかに感じさせる教科長に視線を向けた。 「君もあと1週間耐えなさい。その1週間何も無かったら罰を解きましょう。本当は例の件で重くするつもりが…仕方が無いね。君にはまいるよ」 あと、1週間。ボクは心の中で数え始めた。
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