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ツクツクボーシ
暗く湿った、でも暖かい場所。
そこでボクは、いくつもの季節を過ごした。
丸くなって。
満ち足りて。
そんな時間が、いつまでも続くんだと思ってた。
なのにある夏の日に、ボクは急に外へ出たくてたまらなくなったんだ。
怖い。
でも陽の光を浴びたい。
外の世界を知りたい。
誰かに出会いたい。
誰か……って、誰だろう?
手が、足が、身体全体が、
何かを求めて勝手に動く。
見えない何かに衝き動かされてボクは、
ボクを守るすべてのものを振り切って、外へと這い出した。
ひんやりした空気。
ボクはこれから何をしたいんだろう?
わからない。
わからないけど、登る。
一生懸命に全身を動かして、登って、登って。
ふっ、と身体が動かなくなった。
怖い。
丸くなりたい。
でも背筋がピンってひきつって、動けない。
怖い。
怖い。
そして、
ボクは全身に、明るい光を浴びた。
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