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あの子はもう、歌えない。
私を置いて、いなくなってしまう。
でもあの子の声が、心にこだましてる。
『大好き、大好き、大好き』
こだまは何度も何度も繰り返して、
そして心が、『大好き』で溢れた。
思わず私は叫んでた。
「私はここにいるわ。あなたを見てる。ずっと見てるから」
動かなくなったあの子を溶かそうとでもするかのように、雨が激しくあの子に打ちつける。
そう、早く。
早くあの子を土に還して。
また私の足元に。
もう一度、こんな出会いを育てるために。
あの子の声が、ずっと、ずっと響いてる。
『大好き、大好き、大好き』
ああ私、――淋しくない。
『私も大好きよ』
私もあの子にそう言えば良かった。
あの子の母親が、私の身体にあの子を産み付けてくれたのは、きっとこのためだったのね。
私にあの子を出会わせるために。
私が淋しくないように。
私がこれからずっと、小さな子達をゆったりと愛してゆけるように。
私が小さな子達をただ見ているだけではないと、
それを気づかせてくれたのね。
私、ずっと愛されてた。
ずっと愛してたのね。
小さな子達、みんな。
ありがとう。
大好きよ。
私の足元で育っているすべての子達に、次からはためらわずに、声をかける。
ああ、『ありがとう』も『大好き』もみんな、同じ気持ち。
同じ気持ちがいろんな言葉になる。
この気持ちがあるから、私はもう淋しくない。
溢れ出したたくさんの思いは、きっと残る。
私が朽ち果てたあとも、ずっと、ずっと。
小さな子達の中に、ぎゅうっと詰め込まれて。
この大きな空に、ゆっくりと広がって。
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