39人が本棚に入れています
本棚に追加
眩しい……。
ボク、目が見える!
初めて見る外の世界は、すべてが輝いていて、美しかった。
お陽さまが昇って、風が流れて。
風に押された雲が、時折お陽さまを隠すと、いろんなものが、また違う色になる。
お陽さまが山の向こうに沈んで、代わりに細い細いお月さまが、赤い空にぶら下がるまで、
その日のボクはよじ登ったその場所でそのまま、ただボーっと、外の光と空気を、肌で感じてた。
次の日、またお陽さまが顔を出したら急に、
ひとつの気持ちが衝き上げてきて、ボクは我慢できなくなった。
歌いたい!
ボク、歌えるのかな?
でも歌いたい。歌いたい!
さわさわと音を立てた風が、ピンと伸びたボクの背筋を揺すって、囁いた。
「声を出してごらん」
そう聞こえた。
――声が出せるの!?
どうやったらいいのかもわからないまま、ボクは身体に力を入れた。
声が! 声が出る!!
ボク、歌える! 歌えるんだ!!
嬉しくて、嬉しくて。
昨日登った場所にしがみついたままボクは、
お陽さまが傾くまで、1日中歌った。
幸せな、幸せなその1日。
真っ暗になってから、すぐそばで水の匂いがするのに気がついた。
飲んでみたらとっても甘くて、疲れた身体に心地よく染み込んだ。
そしてなんだか懐かしい味。
ボクは安心してそのまま眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!