ツクツクボーシ

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またお陽さまが昇る。 クスノキが微笑みながら、ボクの歌を聴いてくれる。 周りの空気ごと包んでくれて、ボクは嬉しくて幸せで、日暮れまで歌い続ける。 またお陽さまが昇る。 クスノキは今日も優しい。ボク、クスノキが大好き。 大好きだ、って思ったら、ちょっと不安になった。 クスノキは、ボクのことを好きかな。 「大好き、大好き、大好き」 大声で何度も歌うと、クスノキが困った顔をする。 何だか悲しそうな顔をする。 「大好き、大好き、大好き」 「ねえ、照れるから控え目にしてくれないかしら」 「だって、気持ちが湧き出て止まらないんだ」 クスノキに笑って欲しくて、ボクは心を込めて歌い続けた。 次の日も、その次の日も。 「大好き、大好き、大好き。 きみはボクのこと好き?」 どさくさ紛れに何度も尋ねるボクに、クスノキは答えてはくれなかったけど、でも恥ずかしそうに微笑んで、日陰を作ってくれた。 ちょっと淋しそうだったけど、ずっと微笑んで、ボクの歌を聴いていてくれた。
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