ツクツクボーシ

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またお陽さまが昇ったら、なんだか身体がだるかった。 でも歌いたい。クスノキの笑顔が見たいもの。 いつにも増して、ボクは心を込めて歌い始めた。 声がちょっと変だったけど、歌い続けた。 クスノキが心配そうに言う。 「疲れたでしょう。こっちの日陰で、ちょっと休憩しなさいな」 「嫌だよ。歌っていたいんだ。 歌わなきゃ、きみはボクを見てくれない気がする」 「いつも見てるわ。ずっと見てる」 「じゃあどうして好きって言ってくれないの?」 クスノキはまた、悲しそうな顔をした。 違うよ、ごめん、そんな顔をさせたい訳じゃないんだ。 ボクはやっぱり歌わなきゃ。 歌ってクスノキを笑顔にしなきゃ。 なのに。 気がついたらボクは、クスノキの身体を離れて、足元に落っこちていた。 風が吹いて、細かい雨が降り注いできた。 ボクを包んでくれていたクスノキの腕も指も、ここには届かない。 冷たい。声が出ない。 もう歌えない。 歌えないボクはダメ? 歌えないボクは嫌い? クスノキから離れたら、僕はどこへ行くのかな。 クスノキの声がした。 「私はここにいるわ。あなたを見てる。ずっと見てるから」 あなたが大好きだ、って、聞こえた。 『うん。ボクも大好き』 心で呟いたボクの声が、雨に溶けて地面に染み込んでいく。 『大好き』 雨を、初めて気持ちいいと思いながら、ボクはどこかへ吸い込まれた。 image=474931011.jpg
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